「SLOW ART INTERVIEW」(スローアートインタビュー)ではスローアートセンター名古屋の企画やイベントにつながりをもつ様々な方や企画をご紹介。
第4回はスローアートセンターの屋上菜園にて展開中の「Edible Classroom プロジェクト」主宰の名古屋芸術大学デザイン領域准教授 小粥千寿(おがいちず)さんにお話をお伺いします!
Q.「Edible Classroom プロジェクト」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?
「食」 x 「ローカル」をキーワードに名古屋周辺エリアで、食の生産や流通、消費にスポットをあて、フィールドリサーチを遂行し、そこから得られた「気づき」を展示などを通してより多くの人たちと共有し、書籍等にアーカイブしていくプロジェクトです。
Q.芸術・デザインという領域の中で、どうしてそのようなアプローチをしようと思われたのでしょうか?
現在、名古屋芸術大学デザイン領域・メディアコミュニケーションデザインコースとライフスタイルデザインコースの授業を兼任しており、そのうちライフスタイルデザインコースは「Edible Classroom プロジェクト」のような形で、日常の衣食住などを見つめ直して、フィールドワークをしつつ気づきを得ながらデザインというものを研究をしていくコースです。着任をする前から個人のプロジェクトで「食」に関わるリサーチをしていたので、その流れで大学でも似たようなプロジェクトをできたらと思い、 2023年度10月から「Edible Classroom プロジェクト」を始めました。
Q.大学時代は地理学を専攻されていたということですが、人文科学、文化人類学的なアプローチをデザインに落とし込む考え方とはどのような感じなのでしょうか…?
もともとは大学で地理学専攻で、一旦企業に就職を就職をしてから、やっぱりデザインを学びたいと思い、オランダの大学に改めて入学をしました。Excelと格闘する日々の中で「『1+1=2』じゃないことをやりたい!」と思ってしまったのです(笑)
当時はDutchDesign(オランダのデザイン)がはやっていた時代で、色々な条件と自分のやりたいことを調整した結果、オランダの大学にいくことになりました。
大学を卒業してからは、自主プロジェクトとして地理学を元にしたアプローチでデザイン表現をする活動をベースに、フリーで色々仕事をしたり、友人のブランディング会社で地元企業のブランディングやデザイン制作にたずさわったりしているうちに、大学の仕事をするようになりました。
デザインというと、美しくて、かっこいいものを提示しなければならないという観念があるかもしれませんが、そんなことはないと思います。人の日常の営みにフォーカスをして、それをどうやって編集してみるか、色々やり方があるのではないか、という思考の部分にもたくさんデザインがあるのです。スローアートセンターの屋上菜園でも、手を動かして作業をすることで、思想に身体性が生まれ、生まれるものがあると感じています。
Q.「Edible Classroom プロジェクト」で、農家さんの取材を続けられていると思いますが、名古屋でプロジェクトを展開する中での気づきや、感触、他地域との違いなど印象的な部分はありますか?
江南市、愛西市、大学周辺などを取材しましたが、名古屋と一口に言っても結構広いので、名古屋の中での特色はあるなと感じています。この辺は有機の農家さんが多いな、とか、大学周辺で取材をした農家さんは区画割の影響で土地が狭い農家さんが多いな、とか。基本的には平野部の地域なので農地は豊かにあるのですが、工業地域でもあるので近郊農業が多かったり…リサーチしてわかる特色がありますね。
【フィールドワークの様子】
Q.10/20-27開催の展示「食の小さな循環〜それぞれの農と小さな道具たち〜」の展示テーマ、また、プロジェクトを行う上でコンセプトにしていることは何ですか?
今回の展示タイトルにもあるように「小さな道具」というキーワードがあります。小規模な農家さんの道具をリサーチして、フィジカルとして小さいだけではなく、小さく回すことの意味のようなものをみていきたいと考えています。家庭菜園を超えているけれど、専業農家ではないという方々や、面白い農具を創作されている農家さんがいたりして興味深いなと思いました。そのような営みにもあるように、自分たちが環境と関わり合う時には、道具が必要な場合がありますよね。土を掘ったり、観察したり…「小さな道具」をみていく中で、環境との関わり方は多様にあるということを知ってほしい、と考えています。
現代はスーパーに行くといつでもパック詰めされた野菜や食品が売られていて、大量生産されたものをお金を出して買うのが一般的です。そのような経験からは、環境と直に関わる機会がありません。現代の食のシステムのサイクルから一歩出て、自分が環境と直に関わるという時には道具が必要になるので、その一歩に気づきを与えられたらと思います。
【「食の小さな循環〜それぞれの農と小さな道具たち〜」イメージビジュアル】
Q.「Edible Classroom プロジェクト with SLOW ART LAB」を続けるにあたって、スローアートセンター名古屋ではどのような展開をしていきたいですか?これからの活動のイメージがありましたら教えてください!
常に「小ささ」「サイズ感」を意識しながら、色々な人と関わって、気づきや好奇心を得たいと思っています。リサーチで話をきくというところがポイントであり、面白いところなので、大学の外に出て活動・取材を続けていきたいです。
今の時代は意識しないと画面の中で完結してしまって、身体を動かさないので、身体性の確保という意味でも「頭を使うのと体を使うのを両方半々に」ということを念頭においています。目の前のことを見て、失敗もすればいいですし、タネをまき、育てるということを通して、自然と関わり合いながら、お金ではない価値として得られるもの、を見つめて伝えていきたいと思っています。
【スローアートセンター名古屋の屋上菜園と収穫した野菜とハーブ】
※スローアートセンター名古屋で展開中のプロジェクト「Edible Classroom プロジェクトwith SLOW ART LAB」についてはこちらからご覧いただけます。
Edible Classroom プロジェクトwith SLOW ART LAB
https://sac.nagoya/event/398.html
名古屋芸術大学デザイン領域 EdibleClassroom
https://edible-classroom.com/