愛知県在住アーティストの設楽陸による、有名絵画、有名キャラクターをモチーフに描かれた「名作シリーズ」を展示しています。作品は施設2階のガラス張りの廊下に設置され、屋外広場からみつけることができます。
展示空間に入り近距離で作品と対面すると、その見慣れた「名作」だと思っていた画面は、実は無数の爆弾により構成されたものであることを知ります。
無数の爆弾は、設楽が幼少期の「親にTVゲームをやらせてもらえず、妄想でゲーム世界を構築していた」「ゲームのアイテムの爆弾を紙の上にたくさん描き殴っていた」という記憶がルーツになっています。
私たちが作品と対面し、見慣れたイメージが一変するその瞬間、設楽自身の妄想世界と記憶が、私たちの中に侵入し、自分の内と外、現実と仮想の境界が静かに揺れ動きます。
そして、作品のある廊下を抜けるとプライベートサウナルームがあります。
この鑑賞体験が、サウナに入る前の“心の温浴”として、感覚を開き、内外の境界をほどく準備として作用することで、サウナでの「ととのう」体験――身体の解放や感覚の再調律――がより繊細に、内省的に感じられるようになるのではないでしょうか。


1985年 愛知県生まれ。
2008年 名古屋造形芸術大学 美術学科 総合造形コース 卒業。
リアルスタジオとVRスタジオを行き来しながら絵画作品、彫刻作品を制作。初期からのゲーム的世界観や仮想、妄想、自身の内なる物語をテーマとしており、近年はより現実と仮想の融合と実存そのものについて制作を通して模索し続けている。
幼い頃、TVゲームが禁止されていて学校の勉強ノートや紙の上に自分で妄想し考えたゲーム世界やキャラクターを描き独りプレイしていたことが絵の構図、色彩感覚に大きく影響している。爆弾が集まり描かれている人物や風景は頻繁にゲームに登場していた爆弾のアイテムを紙の上にたくさん描き殴っていた時の記憶をルーツとしている。
また当時、喘息とアトピーを患っており、自分の身体的な弱さと現実世界への違和感から妄想の世界に親近感を覚え「ここではないどこか」「ここにはいないだれか」の存在を意識し始めた。 だから描かれている対象は「自分」であり、「あなた」であり、「あれ」であり「これ」である。
現実も仮想も、違いが分かりにくくなって来ている今の時代において、もうどちらが現実で仮想なのかより、大切なのは、それを楽しみ自分を想うことなのかもしれない。